Q&A

インドでは独立取締役という制度があると聞きました。独立取締役とはなんですか。どのような会社が独立取締役を選任する義務がありますか。

独立取締役を選任する義務のある会社は、上場会社と一定の要件を満たす公開会社です。一方、非公開会社には独立取締役を選任する義務はありません。

(1) 独立取締役とは

独立取締役(independent director)とは、一定の資格要件を満たす取締役を言います。独立取締役の資格要件は、以下の要件をはじめ詳細に定められています。

① 会社のマネージング・ディレクター(managing director)、常勤取締役(whole-time director)、指名取締役(nominee director)のいずれでもないこと

② 会社、親会社、子会社又は関連会社(以下、「関連会社等」といいます)のプロモーター(promoter)でなく、かつ関連会社等のプロモーター又は取締役の関係者ではないこと

③ 本人も親族も会社、関連会社等のプロモーター若しくは取締役と金銭上の関係又は取引関係を有していないこと

④ 本人も親族も、直近の3会計年度において会社、関連会社等の主要経営層役職員(key managerial personnel)又は従業員ではなかったこと

⑤ 本人が親族との合計で会社の総議決権数の2%以上を保有しないこと

①の指名取締役には、会社の株主が指名した取締役が含まれるため、例えば、合弁契約上の指名権に基づき各株主が指名した取締役は独立取締役に該当しないこととなる点には注意が必要です。

(2) 独立取締役を設置する義務のある会社

上場会社と非上場の公開会社のうち一定の要件を満たす会社は、独立取締役を選任する必要があります。一定の要件とは、①資本金が1億ルピー以上であること、②売上高が10億ルピー以上であること、又は③借入金、社債、若しくは預託金(deposit)が総額5億ルピーを超えること、です。

一方で、非公開会社の場合は、独立取締役を選任する必要がありません。

(3) 独立取締役の人数

上場会社の場合は全取締役の3分の1以上を独立取締役とする必要があります。非上場の公開会社で独立取締役の選任が義務付けられる場合は、2名以上を独立取締役とする必要があります。

以上の(2)(3)をまとめると下記の表のとおりとなります。

会社の分類 独立取締役の選任の要否
公開会社 上場会社 全取締役の3分の1以上の選任が必要
要件を満たす非上場会社 2名以上の選任が必要
非公開会社 選任の必要なし

(4) 独立取締役の選任候補について

インドにおいては、独立取締役の候補者が登録されたデータバンクが存在します。データバンクには、候補者の氏名、住所、資格要件が登録されます。このデータバンクを利用し、独立取締役を選任することも可能ですが、データバンクを利用せず、独自に探すことが多いと言えます。独自に探す場合、現地の法律家や会計士、コンサルタント等が候補となります。

(5) 留意点

独立取締役の資格要件を満たす適任者を探すためには費用のみならず、時間を必要とします。インドにおいて公開会社を設立する場合には、独立取締役の選任が必要とならないかを検討し、必要となる場合には適任者を探すために必要となる時間も考慮したスケジュール策定が必要となる点に留意が必要です。

 

2017518日)
弁護士 本田昂平

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